2016年5月21日土曜日

ナヴェット



モロッコのビスケット「コリシラット」(左)とマルセイユのお菓子「ナヴェット・ドゥ・ミディ」(右)

日本の洋菓子界の大御所と言われる河田シェフのお店、オーボンヴュータン(世田谷区・尾山台)で「ナヴェット(=小舟のこと)」というお菓子に出会いました【写真右】。
中世から東方およびアフリカ交易の要衝として栄えた大貿易港マルセイユのお菓子。
この形は小舟の姿なのだとか。
控え目な甘さをオレンジフラワー水とアニスの甘い香りが引き立てます。
シンプルな材料で気取りが無く、庶民派なのにエレガンスを醸す・・・そんなお菓子。

どこか懐かしい香りは・・・そう!モロッコで出会っていたせいでした(!)。
モロッコの歯固めビスケット「コリシラット」。こちらは胡麻が加わって、アラブらしい素朴さがプラスのお菓子。
文盲の子守りのお手伝いさんから作り方を教えてもらったけれど、「これくらい」「あれくらい」・・と、なにせ配合がアバウト(文盲だからメモが無く、全部勘でおぼえているのです。)何度も試作を重ねて記憶にある甘さと固さを再現したのがこちら【写真左】。
オレンジフラワー水は、香料として地中海のいろいろなお菓子に使われています。

ナヴェットは、風味はコリシラットとよく似ていますが、修道院と関わりがある(ミサの後の信者相手に売られていたとか)というところなど、いかにもフランスらしい。
なんびとも、美味しいお菓子で胃袋を捕まれ、心癒され、導かれてしまうのです。
お菓子は、人の本能と上手く寄り添いながら、何時の時代も至る所で宗教的活動に貢献しています。

洋菓子にはあまり執着が無かった私ですが、お菓子にまつわるエピソードにそそられ、河田シェフの一番分厚い本を買ってしまいました。フランス各地を隈無く巡り、古典を紐説き、お菓子作りに向われる河田さんの、誠実なお仕事ぶりが推察できます。
中国料理の本同様に、料理本を歴史書のように読み解く楽しみが湧く一冊です。

ところで、ナヴェット・ドゥ・ミディの「ミディ」は、"南"を指すのか"午後"を指すのか??
南仏のナヴェットさんなのか、午後のおやつのナヴェットさんなのか???

今度お店に行ったら、尋ねてみよう。



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