2014年8月27日水曜日

『巡り合わせのお弁当』

監督・脚本:Ritesh Batra リテーシュ・バトラ
主演:イルファーン・カーン(サージャン)
   ニムラト・カウル(イラ)
   ナワーズッディーン・シッディーキー(シャイク)


ダッパーワーラー=お弁当配達人。
インドの最大都市、ムンバイには、家庭の台所から出来たてのお弁当を集荷してオフィスに届けるという配達サービスがあるらしい。

毎日20万個ものお弁当が、ダッパーワーラーを介してオフィスと家を往き来する。
自転車で・・電車で・・・何人もの配達人(従事する人は文盲も多いとか)をリレーして渡されるにもかかわらず、誤配送の確立は「600万分の1」(ハーバード大学調べ)。
この極めてアナログな世界に、IT級の誤差の無さ(!)。
こう聞けば、まずはダッパーワーラーのシステムが気になるところ。


でも、この映画は、配達員の話ではなく、600万分の1の確立で誤送されたお弁当を作る主婦と食べる男性の数奇なご縁のお話。
お弁当を作る主婦とムンバイのサラリーマンライフのルーティーンが並行して描かれ、その坦々とした日常の中で変化する人の心がさり気ないやりとりの中で浮き上がってくるのです。その構築ぶりったら、まるでヨーロッパ映画。
そして、終わり方も・・・・日本人なら「もうちょっと突っ込んで描いて終わって!」と言いたくなるほど、先をコチラの想像に託された形で終わるのであります。

それはさておき、私の着眼は、なんといってもインドの「お弁当」。
あの4段重ねの立派なお弁当には日々どんなおかずが入るのか??

チャパティ2枚、バスマティライス、日替わりカレーにサブジなどの総菜。
私達みたく、お弁当箱から直接食べるんじゃないんですね。
トレーに移してから、混ぜ混ぜして食べる。これは手を使うせいでもあるかもしれないけれど、4段のお弁当、客観的に見て、結構な量です。
そうかと思えば、バナナ2本で昼食を済ませる人もいたりして・・・。
食事風景を見ると、それだけで、そこの社会が凝縮して見えます。

インドの主婦は、毎朝小麦粉を捏ね、1枚1枚、チャパティを焼く。
チャパティが焼けないとお嫁に行けないんだそうです。
「パン食は楽ちん」と思っていたけれど、インドのパンは、作り置きのできないチャパティ。それだけに、パンだけでも凄く美味しいんだそうですよ。

インドを旅行したら、スパイスも魅力だけれど、このチャパティを焼く為の鉄鍋チャパティパンを是非買って帰りたいもの。


ダッパーワーラーのシステム、こちらに詳しく解説してあります。
  ↓
http://dailynewsagency.com/2011/05/28/dabbawallah/


イギリス領の頃から100年以上の蓄積されたノウハウ・・・+それを可能にした社会背景。
この解説の最後にこうあります。

(前略)「働くこと」や「自分と周りの関係」について、私たちとは根本的なところから違っているようです。
「自分が属する社会で、自分はなぜ生きているのか、生かされているのか」最近ニュースや新聞でよく聞くセリフですが、そういうものすごく根本的なところを彼らはなんらかの方法で理解できているのだと思います。(後略)」

インドの神秘、触れてみたい気がします。


      同じくインド映画『スタンリーのお弁当箱』より

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